NZ Wine News
ニュージーランドワインニュース
24.08.2020
ニュージーランド固有種の昆虫、ウェタの大好物はブドウのつぼみ

マールボロの東に位置するアワテレ・ヴァレーに生息するニュージーランド固有種の昆虫のウェタ(世界最大重量と言われる、コオロギのような形態の昆虫)がブドウのつぼみとその汁が大好物だ、と最近発表された調査報告書が報じている。

現地のブドウ栽培関係者にはこの「発見」は特段目新しいことではないが、他の地域ではあまり知られていなかった現象だ。
マッセイ大学の生物学者が最近発表した論文によると、ウェタは春につぼみが出かかっているブドウの木に被害をもたらし、一部のブドウ園では「悪名高き虫」だと称されている。
この巨大昆虫のことを「ワイン・ウェタ」と報告書の筆頭著者のスティーブ・トレウィック教授は名付け、同種のウェタは北島の北部にも生息しているが、ブドウを食さないようだ、と記している。

ウェタがブドウのつぼみを食し、汁を飲んでいる所を研究者が直接観察できたのは、ブレナム南部のアワテレ・ヴァレー海岸部にあるケーブル・ベイ・ヴィンヤードでの2度の実地検分の成果だった。この実地観察は2018年10月初頭から2019年にかけ、ブドウ畑でウェタ予防対策を模索していたブドウ園の責任者から観察の許可をとりつけ実現したもの。その際に採取した約半分のウェタ体内からブドウの苗が見つかり、また3分の2が他の無脊椎動物を食していたことを発見した。

「ちょうどこの頃にはブドウ園の責任者たちがブドウの苗へのウェタ被害に気付き始めた頃だった。ウェタが食べたのはつぼみ一口だったのかもしれないが、そこから出てくるはずのブドウ全部にダメージを与えたことになるのかもしれない。ワイン・ウェタを観察してから確信できたことは、アワテレ・ヴァレーのグラウンド・ウェタはブドウの木を上ることが出来る。

そしてもう一つ明確なのは、ウェタはブドウのつぼみを餌にしていることだ。ウェタはブドウの木の下に生息している。私達の観察からは、木の下に生息するウェタは通常数が多い。これは恐らく乾季時の水分のためだと推測される。灌漑された所に生える木から距離があく程ウェタの数が減少する。それが原生林まで行くとまた生息数が増加するが、この周辺ではあまり原生林は存在していない」とレウィック教授はニュージーランドの生態学誌での寄稿文に著している。

ブドウ栽培者たちは電柱にスチールの帯をつけポッサムが電柱の上るのを防ぐ方法を用い、ブドウの樹幹をプラスチック製の袋で包みウェタが木を登れないような対処方法も取った。
「プラスチック袋がどの程度ウェタがブドウの木を登れなくしているのに貢献しているかに関しては殆ど関連性を見出すことが出来なかった」と前述の研究報告書に記されている。
「ブドウ栽培者としては、プラスチック使用は将来的には避けたいとの意向だ。プラスチック袋を取り付けるにはコスト増になり、しかもそれを数年毎に取り変えなくてはならないし、彼等は殺虫薬を固有種には使用したくない」、とブラガト研究所でブドウ栽培普及・研究マネージャーのレン・イボッツソン氏はいう。

固有種の無脊椎応物の多くは法律で保護されていない。「国有地では保護されてはいるが、ニュージーランド国内では、固有種の無脊椎動物の大半は保護されていない。数種のジャイアント・ウェタは保護下にあるが、小型のものは保護されていない。今後の持続可能な方法としては、ブドウ栽培者が事業の一環としてウェタの被害を容認する事だと考えている。アワテレの自然林で住む動物は、人類がニュージーランドに到達するずっと前から生息していて、今でも生息しているだけでも非常にラッキーな事だ。

「ニュージーランドに生息する固有種が人為的な生態系の変化で良い影響を受けることは殆どないが、ワイン・ウェタに関しては特に地域的で顕著な例だった」と前述のトレウィック教授は語る。
この報告書にはカティピ・コーストにしか発見されない他の4種のグラウンド・ウェタについても言及しており、トレウィック教授によると「素晴らしい」ものだそうだ。

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