NZ Wine News
ニュージーランドワインニュース
23.06.2020
若い世代を引き寄せるワインのカーボン・ニュートラル

トロピカル・フルーツのはじけるようなマールボローのソーヴィニヨン・ブランは世界中でよく知られているが、ワイン作りに関わる人達はこの名声から何かを取り除き、より一層人気を高めたいと願っている。その何かとは、二酸化炭素だ。

ニュージーランドワイン生産者協会が最近発表した「2050年までにカーボン・ニュートラルとなる目標」で排出ガス減少は、ワイン業界の生産者とブドウ栽培に従事する人へも重要課題となって来ている。環境にやさしくワインを造るという考え方は特段目新しいものではなく、1990年代から国中の持続可能な生産プログラムとして実施されている。
しかし昨年11月のゼロ・カーボン法の制定で、ワイン業界は新たな目標を課せられた。

国内最大の家族経営のワイン生産会社のヴィラマリアで持続可能のビジネスとリスクマネジャーとして働くカレン・ティツレア氏の役割は、まさにこのカーボン・ニュートラルだ。もともとワイン業界では二酸化炭素発生の多い業界ではなかったが、ワイン生産の地球への影響は常に大きな関心事だった。

ブドウ栽培から消費者が最終製品のワインを楽しむまでには非常に多くの工程があるが、二酸化炭素排出に関しては、二つの大きな発生源となる所がある。それは梱包と運送だ。

「例えば、ガラスのワインボトルには利点と欠点がある。ガラスボトルはリサイクルしやすいが、代替品の缶やバッグインボックスに比べるとずっと重量がある。最近でのニッチな製品としてはフランスで生産されている麻が主原料のボトルやカリフォルニアにあるエコロジックという会社が2014年発表している段ボールのワインボトルがある。また末端ではバーでコストと廃棄物の軽減の一環として樽入りワインを扱い始めている。」

「ガラスのボトルは長期的に見てワインの品質維持には良いが、ガラスでもカーボン・フットプリントを減らす方法はある。ニュージーランド国内では一社しかガラスボトルを生産する会社がないため、この会社と協力し、リサイクル材使用の軽いボトルを作るのも一つの手段だ」、とティツレア氏は言う。

リサイクル率が10%のボトルは、材料と製造に必要な熱が低温ですむためにボトル一本につき5%の二酸化炭素排出減となる。またヴィラマリアでの梱包方法を環境によりやさしいパレットを包む材料とラベルの紙へ変更し、これで過去10年で二酸化炭素排出の36%減となった。

一方、ブドウ畑で使用する重機がディーゼルオイルを必要としているため運搬関連の排出量低減はもっと難しい。

「他の対策として倉庫で電気フォークリフト使用に変えた事で、化石燃料に頼る割合を低減したり、トラックの運搬より汽車や船に変える事も同様の効果となる。ヴィラマリアではブドウ畑をオーガニックにしようという計画もあり、これでスプレイ使用を軽減し、雑草駆除には自然な植物が生えてくることになる。オーガニック変遷の第一次陣となるブドウ畑でも苗たちは抵抗力をつけていく兆候を見せており、気候変動への対処としても特に重要なことだ」、とティツレア氏は説明した。

同時に顧客として出来る事は、カーボン・クリック社を通じ、オンラインショッピングの時に排出分のオフセットを払うことがある。カーボン・クリック社は、ニュージーランド航空が既に開始しているオフセット選択に類似しているが、ワインの場合は顧客が自分達の払った金がどのように使用されているか分かるように、追跡番号を知らされる。また同社のサービスでは顧客がどの国の人かの追跡も可能で、支払われた金がその顧客が在住する国でのオフセットプロジェクトへ向けられるようにしている。

今後の課題として残されているのは、ワイン業界とも関連の深い業種(例えば梱包材料サプライヤー)などでカーボン・フットプリントの開示をしない会社だ。さらに二酸化炭素吸収には木よりブドウ苗の方が効果的にも関わらず、ブドウ苗や土壌処理で確保したクレジットを現存の排出ガス会計規則ではカーボン・ニュートラル計算に支障がり、取り込みの妨げとなっている。真のカーボン・ニュートラルとなるにはニュージーランドのワインには非常に大きなセールスポイントになるだろう、と地元でカーボン・ニュートラルを強気に進めるワイナリーのオーナーもコメントを出している。

もうひとつ大きなプラスとなるのは、ワイン生産がほぼ全体が再生エネルギーで賄われることだ。これは1997年に世界初の環境改善の実践を目的とする世界初のワイン業界の団体として創設された持続可能なワイン生産ニュージーランド(SWNZ)の主要な目的となっている。

「グリーン資格の証明は強力なマーケティング・ツールだ。ニュージーランドワインの海外市場での成長はベイビー・ブーマー世代に負う所が大半だが、この人口層は今後10年間のワイン購入量は減少するであろう。そのために、もっと若い世代は環境にやさしいワインを知ってもらうことだ。もし今後も成功を続けていきたければ、若い世代の人にもっとワインを買ってもらうことだ」とニュージーランドワイン生産者協会のマネージャーのエド・マッセイ氏は分析する。

それに加え、ワイン・メーカーとブドウ栽培者たちが二酸化炭素排出軽減への努力の旅に消費者を参加させることが重要なポイントだ。例えば前述のカーボン・クリックのような方法では消費者も責任の一端を感じる。

あるいは「消費者にとって、自分達の購入したものが環境と社会にやさしいものだと知るのはうれしい事だし、同時に楽しみながらできる。これは消費者と生産者双方が共に歩む道であり、私たちもワイン・メーカーとして正しい事をしていきたい」とヴィラマリアのティツレア氏は結んだ。

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