NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
ハイティーカルチャーとスパークリングワイン
第198回コラム(Mar/2019)
ハイティーカルチャーとスパークリングワイン
Text: 利根川志保/Shiho Tonegawa
利根川志保

著者紹介

利根川志保
Shiho Tonegawa

大阪出身、東京で10年弱働いたのち2014年にオークランドに移住。東京での多忙な日々をお酒を相棒に乗り切り、ワイン輸入業での勤務を通してワインの魅力に触れる。また、ニュージーランドの造り手との触れ合いを通し、飾らない日常にワインの文化が溶け込んでいるニュージーランドに興味を持つ。現在は永住権獲得を目標に調理師学校にも通い資格取得のために日々勉強中。映画鑑賞が唯一の趣味だったが新たにゴルフと釣り、家庭菜園にも挑戦中。

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ニュージーランドに移住して5回目の夏がやってきました。こちらの夏は暑すぎず湿度も少なく非常に過ごしやすく、ニュージーランドを訪れるうえでのベストシーズンと言っても過言ではありません。また、ニュージーランドの夏はクリスマスをはじめ、夏気分を更に盛り上げてくれるイベントも目白押しで、夏を思い切り満喫させてくれます。

そして、この時期になると格段に美味しく思えるのがキリっと冷えたスパークリングワイン白ワインとロゼです。金曜日の午後にもなると、オープンカフェやバーで冷たいグラスワインを楽しむ人々で溢れます。

さらに、私自身の仕事の変化として、今までレストランのサラダや前菜などの冷たい料理を扱う部門のシェフでしたが、この度ハイティー部門の責任者に昇格し、新たな経験を積む機会に恵まれました。そこで今回は、ニュージーランドのハイティー文化を少しご紹介できればと思います。

午後の軽食やお茶を楽しむ文化を、日本では「アフタヌーンティー」とオシャレに呼んで親しまれていたりもしますが、ニュージーランドでは「ハイティー」と呼んでいます。この2つの呼び方の歴史を調べると、「アフタヌーンティー」はイギリスが発祥で、上流階級のお茶の文化を“Afternoon Tea”と称し、15時頃にサンドイッチやスコーン等の軽食を紅茶と共に楽しむ格式高い習慣とされています。

そして“High Tea”という言葉もイギリスから伝わったもので、現在でも英語で“Tea”という言葉は夕食を指す言葉でもあるように、“Afternoon Tea”よりも更に遅い時間の労働者階級の夕食を指すものでした。貴族が軽食を楽しむ際のテーブルは低いものを使用していたのと対象に、労働者階級は食事を食べる時のテーブルは高いものを使用する習慣からこのテーブルの高さを表し“high Tea”と言われるようになったそうです。この“High Tea”の由来は他にもあり、“High Tea”の“High”を「格式の高いお茶の作法」という言葉のニュアンスと取り違えてイギリスから外国に伝わったという説もあるようです。

それを踏まえてニュージーランドの「ハイティー」がどのように楽しまれているのかを考えると、食事をしっかりと取るというよりもゆっくりと軽食と会話を楽しみながら優雅なひと時を過ごす為のものと捉えられていると思います。実際にお越し頂くお客様の予約も誕生日のお祝いや、友人の結婚のお祝い、出産前のベビーシャワー、母の日など特別な日のお祝いの機会として親しまれています。

そしてそんなお祝い事に欠かせないのがスパークリングワインです。このハイティーを楽しむために非常に多くの方々が紅茶の前にスパークリングワインを注文されます。基本的なハイティーはハイティースタンドと呼ばれる3段のお皿が縦に収納できるスタンドで提供されます。一番下の段には一般的には前菜のようなカナッペが数種類並びます。そして真ん中の段にはサンドイッチ、一番上の段にはケーキ類が並びます。食べ方の順序としては一番下から順に楽しみ、サンドイッチを食べたあたりで暖かいスコーンが別に提供され、スコーンとケーキを最後に楽しむというのが伝統的なイギリス式の作法だとイギリス人の製菓シェフに教えてもらいました。なので、担当に付いた当初はお茶の時間なのに、なぜスパークリングワインを?という疑問を抱いていたのですが、最初に塩っ気のある前菜をスパークリングワインと共に楽しみ、最後に甘いケーキと紅茶を一緒に楽しむというスタイルは理にかなっているなと納得しました。イギリスのエリザベス女王も毎日欠かさずにハイティーを楽しまれているとか。そんな「ハイティー」はニュージーランドを訪れる際には是非一度味わってほしい文化の一つです。

この夏、私自身の私生活に、もう一つの変化がありました。夏になる前に妊娠が発覚し、冒頭から散々触れて参りました、夏にどうしても飲みたくなるスパークリングワインを今年の夏はお預けすることになりました。しかし、妊婦になっても夏とワインを楽しみたい!と思い、この夏いつくかのノンアルコールワインを試しました。

まず試したのは、Lindauerのノンアルコールスパークリンググレープジュースです。Lindaureはニュージーランドの商業的なスパークリングワインのパイオニアで、お手ごろな価格とスーパーや酒屋等で手軽にゲットできるところから、ニュージーランドで最も人気のあるスパークリングワインと言われています。このグレープジュースはその名の通りブドウのジュースなのですが、味は赤い実のベリーをメインに感じ、いわゆるブドウジュースというものではありませんでした。少し甘めでしたが、炭酸のせいかその見た目のせいなのか、はたまた雰囲気がそうさせるのか、授乳中の友人と飲んだ時はアルコールを飲んだ時のようなお腹がクっと熱くなるような感覚もあり個人的にはお酒を飲んでいる気分を楽しめました。

次に試したのが、オーストラリアのEdenvaleのスパークリング・ロゼです。こちらはワインからアルコールを取り除いて作られたもので、スッキリとした赤いベリーを感じる味わいで、心地よい酸を感じました。こちらのアルコールリムーブドワインは0.5%以下のアルコールが含まれていると表記がありましたが、ジュース等に含まれているアルコールと同じパーセンテージであるとも追記されていました。甘みがLindaureより控えめなので、魚介類やスパイスの利いた中華などの食事と楽しむにはこちらの方が合わせやすいのかなと思います。

この双方のノンアルコールワインですが、ノンアルコールであるとはいえど、ニュージーランドでは購入時には25歳以下とみなされた場合、IDの提示が必要となりますので、ご注意ください。但し、ニュージーランドでの飲酒は20歳からOKです。

さて、今回ご紹介したいレシピはとてもシンプルですが、イギリスのエリザベス女王のハイティーでも定番で、女王が愛するキュウリのサンドイッチをご紹介したいと思います。とても簡単なサンドイッチですが、一つの行程を踏むだけでグッと美味しくなりますので、ピクニックやホームパーティー等のちょっとしたおもてなしの一品にでも加えてみてはいかがでしょうか。

○材料
サンドイッチ用のパン、もしくは食パン 4枚
キュウリ1/2本程度
バター 20グラム
塩 少々

○手順
バターを冷蔵庫から出し、常温に戻しておく。(30分程)

キュウリを洗い、皮を剥く。

キュウリを3ミリ程度の厚さで薄く均等に切っておく。(ピーラーもしくはスライサーで薄くスライスしても大丈夫です。)

スライスしたキュウリに塩を振り2-3分置いておく。
☆余分な水分を出すことでサンドイッチが水っぽくなりません。また、若干の塩味がアクセントになりよりおいしくなります。

2枚の食パンの内側両面にバターをたっぷりと塗り、片方の食パンのバター面にキュウリを並べて、もう一枚の食パンのバター面で挟んだら出来上がり。

パンの耳を切り、三角もしくは縦長のフィンガーサイズに切ったら出来上がり。

キリっと冷えたスパークリングワインやお好みの紅茶と共にお楽しみください。

2019年4月掲載
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