NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
第22回コラム(Jan/2006)
スクリューキャップの大きな役割
Text: ディクソンあき/Aki Dickson
ディクソンあき

著者紹介

ディクソンあき
Aki Dickson

三重県出身、神奈川県育ち、NZ在住。日本では、栄養士の国家資格を持ち、保育園、大手食品会社にて勤務。ワイン好きが高じてギズボーンの学校に在籍しワイン醸造学とぶどう栽培学を修学。オークランドにあるNZワイン専門店で2年間勤務。週末にはワイナリーでワイン造りにも携わる。2006年より約2年間、ワイナリーのセラードアーで勤務。現在はウェリントンのワインショップで、ワイン・コンサルタント兼NZワイン・バイヤーとして勤める。ワインに関する執筆活動も行っている。趣味はビーチでのワインとチーズのピクニック。

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「コルクオープナーはありませんか?」ワインを選んだ後、レジでお支払いしようとしたお客さんに、こう尋ねられることが良くあります。そして、「スクリューキャップですから必要ありませんよ」とお答えすることがほとんどです。

現在ニュージーランドで生産されているワインの約90%は、コルクではなく、スクリューキャップで密栓されています。世界的にも普及し始めているワインへのスクリューキャップの使用ですが、ニュージーランドでの普及率は世界一です。ではなぜ今、スクリューキャップなのでしょうか。

スクリューキャップを選ぶ理由のほんの一部を簡単にご紹介すると、下記の通りです。

多くの方に「スクリューキャップは、早飲みタイプのデイリー・ワインには優れているけれど、長期熟成型セラー用のワインには不向きだ」と考えられていますが、これは全くの誤解。早飲みタイプのワインはもちろん、長期熟成のワインにもスクリューキャップは最適なのです。

また、赤ワインの熟成に酸素の流入が必要だと長らく考えられていましたが、赤ワインの熟成(ワイン内の物質の化学変化)のほとんどが無酸素状態で行われ、有酸素状態で行われる熟成に関して言うと、瓶内のヘッドスペースに残された微量の酸素で充分だということが、最新の研究結果で分かっています。

スクリューキャップは、コルク汚染の問題を解消するために、30年以上も前に登場しましたが、安いワインのイメージが拭いきれず、スクリューキャップで密栓されたプレミアム・ワイン(高品質のワイン)が店頭の棚に登ることはほとんどありませんでした。でも実は、世界中の多くの名門ワイナリーのセラーでは、長期熟成型の高品質ワインがスクリューキャップで密栓され、長年に渡って保管されてきているのです。スクリューキャップ技術に関する広い知識を持つワイン・ジャーナリストのタイソン・ステルザー氏によると、スクリューキャップで密閉されたニュイ・サン・ジョルジュ1964年を始め、ほかの多くのヴィンテージ・ワインを飲む機会があり、それらのワインがとても生き生きしていて、良好な状態で熟成されていたとのことです。

もちろん、天然コルクの全てが悪いと言っているのではありません。良質なコルクを用いれば、コルク汚染の確率も減ります(ゼロにはならない)。ただ、コルクは天然のものですから、その品質は一定でなく、個体差がワインに直接影響を与えてしまうのが問題です。

少し前まで、「コルクでないとワインを買いたくない」と頑なにスクリューキャップを嫌うお客さんが、特にニュージーランド国外からの方々に多くいましたが、最近では、「このワインはスクリューキャップね、安心だわ」と言う方をたくさん見かけます。ワインが本来持っている味と風味を守り、酸化の影響を受けずにきれいに熟成するように促すスクリューキャップの大きな役割は、消費者の中で今後益々理解され、貴重なものと位置づけられると思います。

2006年2月掲載
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