NZ Wine Column
ニュージーランドワインコラム
第26回コラム(May/2006)
ニュージーランド・ワインのはじまり
Text: ディクソンあき/Aki Dickson
ディクソンあき

著者紹介

ディクソンあき
Aki Dickson

三重県出身、神奈川県育ち、NZ在住。日本では、栄養士の国家資格を持ち、保育園、大手食品会社にて勤務。ワイン好きが高じてギズボーンの学校に在籍しワイン醸造学とぶどう栽培学を修学。オークランドにあるNZワイン専門店で2年間勤務。週末にはワイナリーでワイン造りにも携わる。2006年より約2年間、ワイナリーのセラードアーで勤務。現在はウェリントンのワインショップで、ワイン・コンサルタント兼NZワイン・バイヤーとして勤める。ワインに関する執筆活動も行っている。趣味はビーチでのワインとチーズのピクニック。

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ニュージーランド・ワインは、ここ20年で劇的な成長を見せています。生産量的には、世界全体のワイン生産量の、わずか0.3%ほどのシェアですが、国内外のワイン・コンペで数多くの賞を受賞するほどの質を保ち、世界中のワイン雑誌やワイン・ライターたちは、ニュージーランド・ワインに注目しています。特にピノ・ノワール種とソーヴィニヨン・ブラン種を中心に、世界で最も優れていると賞されるワインは、毎年確実に増えているのです。

ニュージーランドはいつ頃からブドウを栽培し始め、ワインを造るようになったのか、今回は、ニュージーランド・ワインの始まりについて簡単にご説明したいと思います。

元来、ニュージーランドに自生するブドウの木は存在しませんでした。1819年、宣教師のサミュエル・マーズデン氏によって、この国に最初のブドウの木が植えられました。

ニュージーランド・北島の北部にあるケリケリに100種類のブドウを植えたマーズデン氏は、当時、「ニュージーランドは、気候・土壌共に、ブドウ栽培に最適な国である」と記しています。そして、1836年にはケリケリから程近いワイタンギで、英国からの移民、ジェームズ・バズビーがニュージーランド最初のワインを造りました。それを起源に、ニュージーランド・ワイン醸造の歴史は、今年で170年を迎えたことになります。

1830年代後半にはシャルドネをはじめとしたフランス原産であるブドウの苗木が、1840年代にはリースリングなどのドイツ原産のものが多く導入されました。1890年代にはクロアチアからの移民が殺到し、ノースランドとオークランドにブドウの木を植え始め、その子孫たちは今でもワインを造り続けています。当時は(1960年代まで)、ポートやシェリーなどのアルコール強化ワインが多く造られていました。

1970年代にニュージーランド最大手のワイナリーであるモンタナが、マールボロにソーヴィニヨン・ブランを植え始め、このブドウで造られたワインが、1980年代の世界のワイン・コンペで最優秀賞を獲得しました。これを機に、ニュージーランド・ワインが世界に注目されるようになったのです。今から20年ほど前のことです。その後、他のワイン産地やワイナリーでも、ソーヴィニヨン・ブランを多く植えるようになり、今ではニュージーランドを代表する品種となっています。

現在、ニュージーランド・ワインの可能性に魅せられたフランス、イタリア、ドイツ、アメリカ、オーストラリアなどの醸造家たちが、ニュージーランド各地のワイナリーでワインを造っています。「向こう10年もして、ブドウ樹の樹齢が高くなる頃には、ニュージーランドのピノ・ノワールはブルゴーニュのピノ・ノワールを超えるだろう」と、ヨーロッパのワイン鑑定士の間では、予想されているほどです。また、マールボロに移り住んだシャンパーニュ地方のシャンパン醸造家たちは、南半球のこの地を、「シャンパーニュに次ぐ、優れたスパークリングワインを生み出す土地」だと絶賛しています。このように、ニュージーランド・ワインは、多くの可能性を秘めているのです。

1890年代にニュージーランド政府の公式醸造家として雇われたクロアチア生まれのイタリア人、ロメオ・ブラガードが、「ニュージーランドにブドウが栽培できない地域はほとんどない」と予想したとき、誰も信じませんでしたが、今では誰もが彼の先見の明を認めています。ニュージーランドにおけるブドウ栽培・ワイン醸造は、これからもますます目が離せなくなっています。

2006年6月掲載
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