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みなさんは、ワイナリーを訪れたことがありますか?ワイナリーに行くと、必ずと言って良いほど見かけるのが、樽。ワインセラー(貯蔵庫)の、整然と積み上げられた樽はもちろんのこと、時には、屋外で植木鉢代わりに、そして屋内では棚やテーブル代わりに再利用されていたりもします。
ワインに用いられる樽は、樫の木で造られています。樫は、ブナ科コナラ属の常緑高木の総称で、どんぐりのお母さんです。200種ほどある樫の木の中で、樽造りに用いられる樫は、たったの二種類。北ヨーロッパ原産種(ブラウン・オークと呼ばれることもある)と、アメリカ原産種です(通称アメリカン・オーク。ホワイト・オークと呼ばれることもある)。
前者は、フランス樫の木(フレンチ・オーク)が特に有名で、ニュージーランドで最も多く使われている樽のひとつです。フレンチ・オークがスパイシーで杉の木のようなデリケートな風味を持っているのに対して、アメリカン・オークは、ココナッツやバニラのような甘い風味が特徴です。樽造りに適した樫の樹齢は150~250歳。例えば、150歳のフランス樫の木から、ニュージーランドで一般的なサイズの樽(バリック Barrique:容量225リットル)がたったの2つしか造れないという、とても貴重、ひいては、とても高価なものなのです(1,300~1,500ドル;約11~13万円)。
樽の中では、熟成中のワインにさまざまな化学変化が起きています。樽の素材は多孔性。つまり木の細かい穴から、ワイン中の水分とアルコール分が透過し、揮発してしまうのです。225リットルのバリックの場合、1ヶ月1リットルの割合でワインが減るこの現象は、通称「天使の分け前」と呼ばれています。代わりに微量の酸素が入って来るわけですが、これが実は良いんです。単一で不安定だった色素の成分、アントシアニンと渋みの成分、タンニンが、このわずかな量の酸素が存在することで、つながり合い、徐々に大きな分子に変化し(この現象を重合と言います)、色素が安定し、渋みが円やかになるからです。とは言うものの、多すぎる酸素の存在はカビや酸化を招きますので、定期的に減った分を埋め合わせる必要があります。
また、樫の木そのものに存在するタンニンや木の香りの成分が加わることで、ワインに複雑みが増します。例えば樫から来る香りとして、トースト、ベーコン、バター、バニラやナッツなどがあります。こういった香りは、樽製造の際の火入れによるもの。短時間焼いたものから、長時間こんがり焼いたものまで、この時間によって、香りの種類が変わってきます。
そんな樽も、4~7年で定年退職を迎えます。ワインの熟成中、樫の香りはワインに移り、1年目で約50%、2年目で25%、3年目で12.5%という割合で、なくなっていくからです。樽の内側を4mmほど削って、新しい木の表面を出すと言う方法で、2年ほど現役時代を延ばす大きなワイナリーも中にはありますが、ニュージーランドでは一般的ではありません。定年を迎えた樽は、半分に切って植木鉢になったり、アーティストがお皿やキャンドルホルダーに作り変えたり、最近では、家具や床板に形を変えて再利用されたりもしています。
ワイン醸造としての現役は短いかもしれませんが、退職後もいろいろな場面で活躍する樽は、いつまでもワインのロマンを語り続けているようです。